【日語共讀】《心》夏目漱石(166)

【日語共讀】《心》夏目漱石(166)

【日語共讀】《心》夏目漱石(166)

或(あ)る時はあまりKの様子が強くて高いので、私はかえって安心した事もあります。そうして自分の疑いを腹の中で後悔すると共に、同じ腹の中で、Kに詫(わ)びました。詫びながら自分が非常に下等な人間のように見えて、急に厭(いや)な心持になるのです。しかし少時(しばらく)すると、以前の疑いがまた逆戻りをして、強く打ち返して來ます。すべてが疑いから割り出されるのですから、すべてが私には不利益でした。容貌(ようぼう)もKの方が女に好かれるように見えました。性質も私のようにこせこせしていないところが、異性には気に入るだろうと思われました。どこか間(ま)が抜けていて、それでどこかに確(しっ)かりした男らしいところのある點も、私よりは優勢に見えました。學力(がくりき)になれば専門こそ違いますが、私は無論Kの敵でないと自覚していました。――すべて向うの好(い)いところだけがこう一度に眼先(めさき)へ散らつき出すと、ちょっと安心した私はすぐ元の不安に立ち返るのです。

也有時,見了他那堅定、高傲的神情,我反而覺得放心了。而且心中後悔自己多疑,暗暗向K道歉。我一面感到內疚,一面覺得自己好象是個很卑鄙的人,心情又驟然厭惡起來。但是過了一陣,以前的疑慮又重新猛烈地回擊過來。由於一切都是從疑念中推測出來的,所以處處於我不利。似乎K的相貌也討女人喜歡,性格也不象我那樣小裡小器。這些正是異性所中意的。就連他那疏闊的神情,都帶有一種堅實的男子氣,為我所不能企及。至於學業,雖然專業不同,我卻甘拜下風——總之,一下子出現在眼前的都是對方的優點,我那剛有點踏實的內心,立刻又恢復了原來的不安。

Kは落ち付かない私の様子を見て、厭(いや)ならひとまず東京へ帰ってもいいといったのですが、そういわれると、私は急に帰りたくなくなりました。実はKを東京へ帰したくなかったのかも知れません。二人は房州(ぼうしゅう)の鼻を廻(まわ)って向う側へ出ました。我々は暑い日に射(い)られながら、苦しい思いをして、上総(かずさ)のそこ一里(いちり)に騙(だま)されながら、うんうん歩きました。私にはそうして歩いている意味がまるで解(わか)らなかったくらいです。私は冗談(じょうだん)半分Kにそういいました。するとKは足があるから歩くのだと答えました。そうして暑くなると、海に入って行こうといって、どこでも構わず潮(しお)へ漬(つか)りました。その後(あと)をまた強い日で照り付けられるのですから、身體(からだ)が倦怠(だる)くてぐたぐたになりました。

K見我這樣心神不定的樣子,便說要是煩了就先回東京吧。他這樣一說,我就又忽然不想回去了。其實,可能是不想讓K回東京吧。我們繞過房州角向對面走下去。向當地人打聽路,回答說就在前面,可是走起來卻沒完沒了。我們頭頂烈日,一邊苦惱著,一邊哼哼地走著。我真不明白這樣走路究竟有什麼意義,就半開玩笑地對 K說了。K答道,有腳嘛,就是走路的。而且一覺得熱,就說下海吧。隨便走到哪兒就在海里泡一泡,過後,又是在烈日下毒曬。我們真累得精疲力盡了。

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【日語共讀】《心》夏目漱石(166)

本期主播:晉助


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