【日本民間故事】舞扇


【日本民間故事】舞扇

むかしむかし、京きょうの都みやこに、名なの高たかい踴おどりの師匠ししょうがおりました。その大勢おおぜいの弟子でしの中なかに、雪江ゆきえという、稽古けいこに熱心ねっしんな娘むすめがいて、一本いっぽんの舞扇まいおうぎ(日本舞踴にほんぶように使つかう扇おうぎで、普通ふつうの扇おうぎより大おおきく、流儀りゅうぎの紋もんなどを描えがいたもの)を、たいそう大切たいせつにしていたのです。何なんでも、雪江ゆきえが父ちちにせがんで、名高なだかい絵師えしに書かいてもらったとかで、いまを盛さかりと咲さいている桜さくらの花はなを描えがいた。それはまあ実まことに見事みごとな扇おうぎでした。

從前,在京都有一個著名的舞蹈師父。在他眾多的弟子裡,有個名叫雪江的姑娘。她非常熱衷於舞蹈練習,並十分珍愛一把舞扇(跳日本舞用的扇子,比普通扇子大,畫有其代表流派的花紋)聽說這把舞扇是雪江央求父親請一個有名的畫師幫她畫的,扇面上畫滿了盛開的櫻花,真的非常漂亮。


ある日ひのこと。どうしたことか、雪江ゆきえはこの扇おうぎを稽古場けいこばに忘わすれて帰かえったのです。師匠ししょうは、あした來きたら渡わたしてやろうと、自分じぶんの機つくえの上うえに置おきました。ところが次つぎの日ひ、珍めずらしく雪江ゆきえは稽古けいこに來きませんでした。そして次つぎの日ひも、また次つぎの日ひも。

有一天,不知為何,雪江把這把扇子忘在排練場就回去了。師父心想:明天她來了再給她吧。於是,他就把扇子放在了桌子上。然而第二天,雪江罕見地沒來練習。接下來又過了一天又一天,她依然沒有來排練。


師匠ししょうは、何なにやら心こころにかかって、ふと機つくえの上うえの扇おうぎを広ひろげてみました。そこには、扇面せんめんいっぱいに、明あかるく花はなが咲さいています。そこへちょうど、友ともだちの佔師うらないしが訪たずねてきました。「ごらんなされ。優雅ゆうがなものじゃ。」師匠ししょうが、広ひろげたままの扇おうぎを渡わたすと、「ほほう、これは美うつくしい。ええー?」友ともだちの佔師うらないしは、しげしげど眺ながめていましたが、しばらくして、「お気きの毒どくですが、この花はなは、今日中こんにちじゅうに散ちりますな。」

師父不知為何擔心起來,他打開桌子上的扇子看了一下。那扇面上畫滿了鮮豔綻放的櫻花。這時,正巧他的一個占卜師朋友前來拜訪。師父把扇子打開遞給他說:“您看,這扇子多麼美麗啊!”“嗬!這真漂亮。咦?”占卜師朋友仔細地看了一會兒,說道:“真可憐啊!這花今天之內會凋謝啊!”


友ともだちが帰かえったあとも、師匠ししょうはその扇おうぎを、ジッと眺ながめていました。「今日中こんにちじゅうに散ちるとは、いったい?」佔師うらないしの言葉ことばが気きになって、夕闇ゆうやみの迫せまった部屋へやに、いつまでも座すわっていました。

占卜師朋友回去之後,師父一直盯著那扇子。“今天之內會凋謝,這究竟是怎麼一回事兒呢?”師父琢磨著占卜師的話,一直呆坐在夜幕將降的房間裡。


「お食事しょくじでございます。」妻つまの聲こえにハッとして、師匠ししょうは開ひらいた扇おうぎを持もったまま立たち上あがりました。すると、ハラハラと、白しろい花弁はなびらが散ちりました。花弁はなびらは、後あとから後あとから散ちって、風かぜもないのに、蝶ちょうが舞まうように、空そらへ舞まい上あがっていきます

“吃飯了!”妻子的叫聲把他嚇了一跳,師父拿著展開的扇子站了起來。突然,白色花瓣撲簌簌地從扇面上散落下來。花瓣一片接一片地飄落,明明沒有風吹,花瓣卻像蝴蝶一樣在空中飄舞。


「おお、これは!」驚おどろいて夕暮ゆうぐれの光ひかりにかざして見みると、扇おうぎの表おもてには、もう、花はなの姿すがたは一片ひとひらも殘のこっていませんでした。そこにあるのは、ただの白しろい舞扇まいおうぎ。

“啊!這究竟是怎麼一回事兒呀?”師父十分驚訝,對著夕陽的餘暉一看,扇子上已經沒有任何一片花瓣了,只剩下白色的扇面。


師匠ししょうは、雪江ゆきえの家いえにカゴを急いそがせました。カゴが玄関げんかんに著つくと、母親ははおやが現あらわれて、「娘むすめは、ほんの先さきほど、息いきを引ひき取とったのところでございます。どうぞこちらへ。」案內あんないされた奧おくの間まには、雪江ゆきえが靜しずかに眠ねむっていました。そしてその部屋へやは、あの桜さくらの花弁はなびらでいっぱいでした。

於是,師父急忙坐轎子去雪江的家。轎子一到家門口,雪江的母親便出現了。“我女兒剛去世了。請您這邊來。”說著她就領師父進了裡屋。他看到雪江安詳地躺在那裡,房屋裡到處都是飄落的櫻花花瓣。


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